山林の価格について

昨年の秋に近くの山林から杉の木を9本切り出しました。

最初の目的は知り合いの懐石料理屋さんがお店を建て替えるので、使ってもらうということでした。

結果的には乾燥の問題やデザインの違いなどから使うことにはならなかったのですが、ここ数年もともと家業であった山林業をどうするかといった事は常々考えていました。

もともと私の家は梅の加工を始める前は山林を育て生活していました。

私が小学生くらいの頃は山林の価格も良かったため、40年から50年位の杉林を伐採しても十分な利益になり、生計を立てていたのです。

今では山林の価格は大きく下がりました。

その当時は山林を伐採しても十分な利益が得られたので、伐採した後の山林に苗を植え、下草刈りをして、少し大きくなってくれば木の枝を切って手入れをしていました。

山林の価格が下がり放置される

最近は山林を切ると次のことを考えずに切ったまま放置する山が龍神村でも増えてきました。これは山林の価格が下がったも影響していると考えられます。

山林をそのまま放置するとやはり災害が出たり山崩れの要素になるので、そのまま放置するということは色々な意味で問題になると思います。

ですから私は現在山の木を切るときは間伐しかせず、一面を伐採するということはしません。

間伐して残った木は、周りが広くなれば成長が早くなり20年30年おけば立派な木に成長します。

こうしていけば苗を植えたり下草刈りをしたりする手間もいらず、お金もかからないので山林の経営が楽になり、山林もどんどん良くなります。

山林の地道な管理からできる良木

切り出した9本の杉を、 近くの製材所に運んで板にして保存することにしました。

その杉の木を板にすると9本のうち7本はもとから3、4メートルは節が全くありませんでした。

それを見たとき親父の仕事の凄さが実感できました。

私も若い頃20年から30年の杉の木を枝打ちと言い、下から出ている枝を木の面に沿ってきれいに払うという作業をしました。

もともと板の節というのは、木の枝の根本なので若いうちに枝を払うと成長とともに節はなくなるのです。

ご存知のように節の全くない無地板というのは製材所から購入しようと思っても少しの節があるものとは価格が違います。

この一連の切り出してからの作業を自分がやると先代の仕事の凄さや山林の価値をすごく実感します。

2代目3代目で木のまま製材所に出したり材木商に山のまま売買する人はそういった苦労は、全く気づかずに大切な山林をお金に変えてしまうのです。

このきれいに手入れされた杉の板を見たときに、今まで親父や祖父がしてきたことの凄さやありがたさがすごく実感できたのです。

未来に残す山林を作りたい

山林業というのは、今ではなくどうなるか分からない未来に対しての地道な作業が、木と人間を育てているのかなと思うとすごく深い気がして、私もこれからどういう風に未来に向けて仕事をしていくのか、どう向き合うのかを今まで以上に考えるようになりました。

今はもう枝打ちを高い所までする山林家もそういないと思います。

この作業をしているかどうかは木を切って初めて気付くことです。

材木のまま買う場合は節があるかどうか製材してみないとわからないので、そんなに高い価格で購入することも実際できないのだと思います。

やはり農業や林業というのは作物や木を育てるところから最終的には自分たちの手でお客様に届けるということをできれば1番に効率よく、その製品の思いや価値が伝わるのではないかと考えました。

ですから今はこういったことを少しでも理解してもらえるように、最終的に製品になるように今準備しています。

今回たった9本の木を切り出しただけでこれだけのいろいろなことがわかるので、今まで以上に私の家の山林を見るのが楽しみで手入れするのもワクワクするようになりました。

近いうちにこの木で作った製品を販売していこうと思うので、本当に楽しみです。

平成30年11月吉日
エムトゥーアール株式会社
代表取締役 寒川善夫

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